『なぜ、その場所なのでしょうか?』
前回は、「変じゃない芝居」で止まっていないか、という話をしました。 今回は、そこからもう一歩進んで、台本に書かれていることへの向き合い方を考えてみたいと思います。
台本に「喫茶店」と書かれていたとします。
多くの人は、どんな喫茶店なのかを想像すると思います。
おしゃれな喫茶店なのか。
古い喫茶店なのか。
静かな喫茶店なのか。
人が多い喫茶店なのか。
もちろん、それも大切です。
ただ、もう一つ考えたいことがあります。
そもそも、なぜ、その場所なのでしょうか?
なぜ、家ではなく喫茶店なのか。
なぜ、公園ではなく喫茶店なのか。
なぜ、居酒屋ではなく喫茶店なのか。
たとえば、別れ話のシーンだったとします。
家だと近すぎるのかもしれない。
人目がある場所を選びたかったのかもしれない。
相手に泣かれたくなかったのかもしれない。
逃げられる場所にしたかったのかもしれない。
最後くらい、ちゃんと向き合える場所にしたかったのかもしれない。
どれが正解かはわかりません。
作者の意図を完璧に理解することは難しいと思います。
でも、台本に書かれていることに対して思いを馳せることはできます。
なぜこの場所なのか。
なぜこの関係なのか。
なぜこのタイミングなのか。
そこに自分なりの解釈を持つことで、
同じ台詞でも少し見え方が変わるかもしれません。
すると、「喫茶店」は、ただの背景ではなくなります。
その人物がその場所を選んだ理由になります。
そして、その理由が見えた時、台詞や行動にも奥行きが生まれます。
台本に寄り添うことは、とても大切です。
ただ、寄り添うことは、書いてあることをそのままなぞることではありません。
書かれていることに「なぜ?」を持つ。
その「なぜ」に対して、自分なりの解釈やストーリーを持つ。
そこに、あなたがこのシーンを演じる意味が生まれるのだと思います。
台本に書かれていることを、ただの設定として受け取っていないでしょうか。
その場所には、どんな理由があるのでしょうか。
その理由を想像した時、芝居は少し変わるかもしれません。